カラーグレーディング
Color Grading別名:色調補正、ルック、グレーディング
概要
描き終えた画像の色とコントラストを、狙った印象に合わせて整える処理。暗部と明部の色味、彩度、コントラストを調整し、夕方らしさ、冷たさ、映画のような雰囲気といった画面の「ルック」を作る。
デモ
使われる場面
映画やゲームの雰囲気作り
場面ごとに、暖かい、冷たい、くすんだ、鮮やかといった色の方向性を決める。同じ場面でも、補正だけで時間帯や感情の印象が変わる。
色味をそろえる
別々に撮った写真や、別の照明で描いた場面の色味をそろえ、続けて見たときの違和感をなくす。
ティールとオレンジ
暗部を青緑に、明部と肌をオレンジに寄せる配色。肌が背景から浮き上がるので、映画やゲームの予告編でよく使われる。
ゲームの状態の表現
体力が減ったら彩度を下げる、夜は青みを足すなど、画面全体の色で状態や場所を伝える。
判断基準
| こういうとき | こうする |
|---|---|
| 画面全体の印象(時間帯、温度感、雰囲気)を変えたい | ライトやマテリアルを直す前に、カラーグレーディングで方向性を試す。画面全体に一律にかかるので、少ない手間で印象が変わる。 |
| 人物や主役を、背景から際立たせたい | 主役の色と背景の色を、補色の関係に寄せる(肌をオレンジ、背景を青緑に寄せるなど)。 |
| 補正したら、肌の色が緑っぽい、または灰色っぽくなった | 補正を弱めるか、肌の色の範囲を補正から外す。人は肌の色のずれに特に敏感である。 |
| 暗いところが真っ黒につぶれた、または明るいところが白く飛んだ | コントラストを上げすぎている。コントラストを戻すか、暗部だけを少し持ち上げる(リフト)。 |
| 同じ補正を、別の場面や別のソフトでも使い回したい | 補正の結果を 3D LUT(色の対応表)として書き出し、読み込んで使う。 |
こう見えたら
指示の例
全体の色が素直すぎて雰囲気がない。カラーグレーディングで、暗部を少し青緑に、明部と肌をオレンジ寄りにして
夕方の場面に見せたい。色温度を暖色側に上げて、彩度を少し上げて
コントラストを上げたら、暗いところが真っ黒につぶれた。コントラストを少し戻して、暗部だけ持ち上げて
古いフィルム写真のような、色あせた感じにしたい。黒を少し持ち上げて灰色寄りにし、彩度を 7 割くらいに下げて
詳細
描き終えた画像の色を、まとめて変える
カラーグレーディングは、描画の最後に、画像の全画素へ同じ色の変換をかける処理である。ライトやマテリアルを一つずつ直すのと違い、画面全体の色の方向性をまとめて変えられる。露出や白の色味(ホワイトバランス)のずれを直して素材をそろえる作業をカラーコレクション、狙った雰囲気を作る作業をカラーグレーディングと呼び分けることが多い。
代表的な操作
基本になるのは、チャンネルごとに暗部、中間、明部を調整する操作である。暗部を持ち上げたり沈めたりするリフト、中間の明るさを曲げるガンマ、明部を伸ばすゲインの三つで、よく使われる式の一つ(ASC CDL)は次の形をしている1。
がゲイン、 がリフト、 がガンマにあたり、赤、緑、青で別々の値を使う。たとえば暗部で青と緑を足し、明部で赤を強めると、暗部が青緑、明部がオレンジに寄る(ティールとオレンジ)。デモのグラフで、左側(暗部)では青の線が、右側(明部)では赤の線が上に来ているのはこのためである。
彩度は、輝度 との差を伸び縮みさせて調整する。
が 1 より大きければ鮮やかに、小さければくすみ、0 で白黒になる。コントラストは、中間の灰色を軸にした S 字の曲線で、暗い値をより暗く、明るい値をより明るくする。
vec3 c = pow(max(color * slope + offset, 0.0), power); // ゲイン、リフト、ガンマ
float y = dot(c, vec3(0.2126, 0.7152, 0.0722));
c = mix(vec3(y), c, saturation); // 彩度
3D LUT にまとめる
補正を重ねるほど、計算は複雑になる。そこで、入力の色から出力の色への対応を、表として焼き込んで使うことが多い。赤、緑、青の各軸を 33 段などに区切った立方体の格子点ごとに、補正後の色を記録したものが 3D LUT である。描画時は、入力の色に近い 8 つの格子点を読み、間を補間して出力の色を求める。画素ごとに色だけで決まる補正なら、どれだけ重ねても一つの LUT にまとめられ、計算の重さは変わらない。ゲームでは、LUT を小さなテクスチャとして読み込み、最後に一度だけ引く方式がよく使われる。
見分け方と落とし穴
補正の強さは、元の絵と並べて比べないと分かりにくい。続けて見ているうちに目が慣れるので、デモのように補正前と見比べながら調整する。
肌の色は、わずかなずれでも不健康に見えやすい。画面全体を大きく傾けるときは、肌の色を確認する。
補正は、画像の精度が高い段階で行う。1 チャンネル 8 ビットに収めた後の画像を強く補正すると、階調が足りずにグラデーションに縞が出る。また、カラーグレーディングが変えるのは色だけで、光の向きや影の位置は変わらない。影の形や明暗の配置が気に入らない場合は、ライティングを直す。
脚注
-
ASC CDL は、映画の制作で色の補正値を受け渡すために決められた形式で、この式に彩度の調整を加えた 10 個の数値で補正を表す。 ↩