被写界深度
Depth of Field別名:DOF
概要
ピントが合っているように見える、手前から奥までの距離の範囲。範囲が狭いと主役の前後が大きくぼけ、広いと手前から遠くまでくっきり写る。絞り(F 値)、焦点距離、ピントを合わせた距離で決まる。
デモ
使われる場面
人物や商品を目立たせる
主役だけにピントを合わせ、背景をぼかして、ごちゃついた背景から主役を浮かせる。人物写真や商品写真の定番の手法である。
映像での視線の誘導
会話の場面で、話している人物へピントを移し(ピント送り)、観客が見るべきものを示す。
風景や建築、説明用の絵
手前から遠くまで細部を見せたいときは、被写界深度を深くして全体にピントを合わせる。
ミニチュア風の表現
被写界深度が極端に浅いと、近くの小さな物を写したように見える。この性質を使うと、実際の街並みを模型のように見せられる。
判断基準
| こういうとき | こうする |
|---|---|
| 主役を背景から浮き上がらせたい | 被写界深度を浅くする。F 値を小さく(F1.4〜2.8)するか、主役に近づくか、焦点距離を長くする。 |
| 手前から奥まで、すべてを見せたい(風景、建築、説明用の絵) | 被写界深度を深くする。F 値を大きく(F8〜16)する。3D なら、被写界深度の効果を切るのが確実である。 |
| 大きな建物や街並みが、模型のように小さく見える | 被写界深度が浅すぎる。F 値を大きくして、遠くまでピントが合うようにする。 |
| 見せたい物がぼけて、別の物にピントが合っている | ピントの距離を、カメラから主役までの距離に合わせ直す。3D では主役をピントの対象に指定できることが多い。 |
| ゲームの操作中の画面 | プレイヤーが見たい物までぼけて邪魔になりやすい。会話や演出の場面に限ってかけ、操作中は弱めるか切る。 |
こう見えたら
指示の例
背景がくっきりしすぎて、主役の人物が埋もれている。被写界深度を浅くして背景をぼかして。F 値は 2 くらいで、ピントは人物の顔に合わせて
手前の花にピントが合って、主役がぼけている。ピントの距離を、カメラから主役までの距離に合わせ直して
街並みがおもちゃの模型のように見える。被写界深度が浅すぎるので、F 値を 8 くらいまで上げて、奥までピントが合うようにして
会話の場面で話す人が替わったら、ピントを 0.5 秒くらいかけて、話している人へ移して
詳細
ピントが合う範囲
レンズは、ある一つの距離にある物の一点を、センサー上の一点に集める。その距離から外れた物の一点は、センサー上で小さな円に広がって写る。この円を錯乱円と呼ぶ。錯乱円が十分に小さく、画素や目で点と見分けられない範囲なら、ピントが合っているように見える。その距離の範囲を被写界深度と呼び、範囲が狭いことを「浅い」、広いことを「深い」という。
コンピューターの中のカメラは、何もしなければ錯乱円が生じない(ピンホールカメラと同じ)ので、どこにもぼけのない絵になる。デモの左側がこの状態で、右側は距離に応じてぼかしている。
何で決まるか
焦点距離を 、F 値を 、ピントを合わせた距離を 、物までの距離を とすると、錯乱円の直径 は次の式で求まる(薄いレンズの近似)。
はレンズの口径にあたる。F 値を半分にすると口径が倍になり、ぼけの大きさも倍になる。焦点距離が長いほど、またピントを合わせた距離が近いほど、 が大きくなり、ぼけは大きくなる。遠くの物()では が 1 に近づくので、遠景のぼけはある大きさで頭打ちになる。デモの右側は、焦点距離 85 mm として、この式で層ごとのぼかし量を決めている。
// 距離 d の物のぼけの直径(mm)。f、N、s もすべて mm で与える
const coc = (d) => (f / N) * (Math.abs(d - s) / d) * (f / (s - f));
// 画面上のぼけの半径(ピクセル)。センサーの幅 36 mm が画面の幅にあたる
const radiusPx = (coc(d) / 36) * screenWidth / 2;
見分け方と落とし穴
被写界深度によるぼけでは、ピントの面から前後に離れるほど、ぼけが少しずつ大きくなる。地面のように奥へ続く面では、ぼけ方がなめらかに変わっていく。同じ距離にある物がばらばらにぼけていたり、距離と関係なく全体がぼけていたりする場合は、被写界深度ではなく単なるぼかしの効果である。
ぼけの量は、写っている物の大きさを見積もる手がかりにもなる。大きな風景に浅い被写界深度をかけると、近くで小さな物を写したときのぼけ方になり、模型のように見えることがある。
3D の被写界深度は、多くの場合、描き終えた画像と深度の情報から後処理でぼかす。この方法では、ピントの合った物の輪郭の近くで、ぼけが途切れたり、手前のぼけの縁が不自然に切れたりすることがある。